tbcラジオドラマ「風の声、ひかりの歌」
物 語
オルガニストを目指す大学生の友里は、宮城県慶長使節船ミュージアム「サン・ファン館」の高台に立っていた。早春の風に吹かれながら・・・。つい、口ずさんでしまうのは、10年前、避難所で聴いた曲。
「いい歌ですね。」話しかけてきたのは、黒いコートに口ひげの男。この3月で惜しまれながら展示を終了する、木造帆船の復元船「サン・ファン・バウティスタ号」を見て誇らしそうな男と言葉を交わすうちに、友里は、父とのこの10年を思っていた・・・。

およそ400年前、伊達政宗がスペインそしてローマに派遣した慶長遣欧使節を乗せた、伊達の黒船、サン・ファン・バウティスタ号は仙台領月浦から静かに船出しました。その2年前、1611年に起きた慶長の大津波からの復興のため、海外との交易を目指すかのように。

400年を経て、「サン・ファン・バウティスタ号」は復元船として石巻の入り江にその勇姿をとどめています。被災して間もない状況の中、世界へと旅立ったその船の姿を望む風景から生まれた物語です。