桂川連理柵
かつらがわれんりのしがらみ 〜ろっかくどうの段・おびの段・道行みちゆきおぼろの桂川〜

 帯屋長右衛門は、24歳も年下の隣家の娘お半と関係 ― 旅先で、夜中、いやらしい丁稚から逃げて来たお半を、まだ子供だと思って自身の蒲団の中で寝かせてやったのが、間違いのもと。しかも、お半は妊娠。恩のある隣家、妻にはもちろん養父にも顔向けできない、取り返しのつかない過ちに、自らを責め、苦しむ長右衛門。それに対し、お半は、妊娠に悩みながらも、小さいときから大好きだった長右衛門以外、夫を持つ気などないとのこと。
 このスキャンダルを利用して、長右衛門を店から追い出そうと企むのが、養父の後妻とその連れ子。店の金をくすねて、罪を長右衛門になすりつけ、旅先での関係を記した長右衛門宛のお半の手紙を読み上げて、長右衛門を窮地に。
 それを救ったのは妻と養父。けれども、長右衛門がお半のことを苦にして自害するのではないかと、不安でなりません。どうか死なないでほしい、二人の切なる願いを聞けば聞くほど、辛さが増す長右衛門。死んで詫びるほかない問題をさらにもう一つ抱えて、すでに死を覚悟していたのです。
 この恋を思い切る、そう伝えて去ったお半が残したものは、桂川に身投げするとの手紙。15年前、桂川で芸子と心中するつもりでいながら、芸子の身投げ後、気が変わって死ぬのをやめた長右衛門は、芸子がお半に生まれ変わって死へと招くように思われ、桂川へ…。
 菅専助による上下二巻の世話物で、安永5年(1776)に大坂の北堀江市ノ側の芝居で初演。題材は、1761年に京都の桂川で年齢差のある男女の死体が見つかった事件で、真相は不明ですが、一月後に心中として人形浄瑠璃化され、その後、宮薗節の歌謡になり流行しました。
 ご覧いただく下巻のうち、「帯屋」では、後半の養父、妻、長右衛門それぞれの思いやりに満ちた真情吐露が聞きどころ。後妻親子が派手に動く前半の丁稚との抱腹絶倒のやりとりも、ぜひお楽しみください。道行は、原作にはなく、のちに宮薗節から取り入れたものです。

夜の部・配役表