MOVIES' DATA


手紙 手紙


手紙
(C)2006『手紙』製作委員会

■□兄貴、元気ですか?
□■これが最後の手紙です。

川崎のリサイクル工場への送迎バス。最後部座席に、野球帽を目深に被った青年の姿がある。
―――武島直貴、20歳。
誰とも打ち解けない、暗い目をしたこの青年には、人目を避ける理由があった。 兄・剛志が、直貴を大学にやるための学費欲しさに盗みに入った邸宅で、誤って人を殺してしまったのだ。 幾度にわたる引越しと転職。掴みかけたのに鼻先をすり抜けた、お笑い芸人になる夢。 はじめて愛した女性との痛切な別離。兄貴がいる限り、俺の人生はハズレ。そういうこと―――。
耐え切れずに自暴自棄になる直貴を、深い絶望の底から救ったのは、常に現実から目をそらさず、日の当たる場所へと自分を引きずり出してきた由美子の存在だった。 しかし、そのささやかな幸せが再び脅かされるようになった時、直貴は決意する。
―――塀の中から届き続ける、この忌まわしい「手紙」という鎖を断ち切ってしまおうと。
●監 督生野滋朗
●出 演山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵  他
●データ2006年/日本映画/121分
LINE
IMPRESSIONS
映画の批評コーナー。 は3段階評価です。
ネタバレの危険がありますので、内容を知りたくない方はご注意ください。

<評>★★★
■映画はこうでなくてはならない。殺人を犯した兄、その罪を背負って辛酸をなめる弟、彼を愛する女性たち、娘を愛する父親、被害者の家族・・・登場人物たちのその時々の感情に共感できる。世の中はきれいごとではすまないので、どんなにいい人間でも、身内に犯罪者がいたら深いつきあはしたくない。そういう弱さもつらさもありのままに人間をきっちりと描くのが映画であり、「手紙」は場面場面で一人一人の心情が斟酌できて、苦しい。主人公が兄を捨てようとするのも当然だと納得できる。だからこそ、それを乗り越えて「捨てられませんよね。血がつながっているんだから」と言った言葉に深い感動が生まれる。作り手の視点がゆれることなく、足場をしっかりさせて兄弟の心を描き、骨太な作品になっている。親子三人で桜舞う道を歩いていく後ろ姿で終わるラストシーン。「つらいことはまだあるだろうが前に進め」と、観客が彼らの背中を押してやる構図がいい。〔たんじ〕

※『私もコメントしたい!!』という方は こちら

スクリーン情報へ戻る