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夜のピクニック 夜のピクニック


夜のピクニック
(C)2006「夜のピクニック」FILM VENTURER

■□特別なこの日なら
□■2人の関係を、きっと変えられる

24時間一昼夜かけて、80キロを1000人一緒に歩き通す、伝統行事「歩行祭」。甲田貴子(多部未華子)は、今年で最後の歩行祭で、密かに賭けをしようと思っていた。一度も話したことのない同じクラスの西脇融(石田卓也)に話しかけるという賭け。そんな簡単なことが出来ない、親友にも言えない共通の秘密が、2人にはあった。それは、貴子と融が同じ父を持つ血の繋がった兄妹だということ。何も知らないクラスメイトたちは、それゆえお互いを意識してしまう2人を「好き者同士」だと勘違いをし、歩行祭でくっつけようと躍起になっている。友人たちの勘違いとお節介が後押しするも、強張った表情しか向けない融に、どうしても声をかけられない貴子。1キロ、また1キロと時は過ぎ、残された時間は20キロの自由歩行のみ。先をゆく融の背中はどんどん遠ざかり、何も出来ないままゴールは迫る…。貴子の賭けは、願いは、叶うのだろうか…?
●原 作恩田陸 『夜のピクニック』(新潮社刊)
●監 督長澤雅彦
●出 演 多部未華子、石田卓也、郭智博、西原亜希、貫地谷しほり、松田まどか、柄本佑、高部あい、加藤ローサ  他
●データ2006年/日本映画
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映画の批評コーナー。 は3段階評価です。
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<評>★★★
■冒頭、長回しのカメラワークによって高校生たちの様々な息づかいをライブで体験するとともに、長回しを意識する。そして、歩行祭が始まると私たち観客も80キロの距離と時間をライブ体験することになる。主人公たちの肉体の疲労と精神の高揚を歩みにつれて目撃する感覚は長回しである。心中の葛藤をアニメで描く余裕のある頃から「疲れすぎて嘘もつけない」終盤へ、余計なものがそぎ落とされ極限状態に達した時に何が出てくるのか、期待は高まっていった。満を持して実現した異母兄妹の会話はアイデンティティを確かめ合うもので、すがすがしかった。「凛とした」姿に「嫉妬」さえ感じた。共通一次一期生としてはセンター試験に挑戦したくなるほどだ。「ゴール」という声にかぶさって映されたスタートの門。彼らが「いつかまた歩こう」と前を向いているのもいい。「恋する女たち」「櫻の園」といった背筋の伸びた高校生を描いた作品の系譜にまた一つ佳作が加わった。〔たんじ〕

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