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浄瑠璃三大傑作のひとつで、人形浄瑠璃の全盛期、延享4年(1747)に大坂の竹本座で初演された、二代竹田出雲、三好松洛、並木千柳合作の五段の時代物。四段目の、満開の桜を背景にした道行は、道行の最高傑作とされ、目も耳も圧倒される極めて華麗な舞台です。 平家滅亡後、兄源頼朝に追われる義経が吉野にいると知った愛妾静御前は、義経の忠臣佐藤忠信に伴われ、吉野へ。道中、義経から与えられた鼓を静が打つと、必ずどこからともなく姿を現わす忠信。その正体は狐…。 忠信がどう登場するか、また静から忠信への豪快な扇の投げ渡しも、見どころです。 |
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歌祭文によって世間に広まった、大坂の油屋の娘お染と丁稚久松の心中(1710)。この事件から生まれた多くの作品中、最も有名で人気のある、近松半二の二巻の世話物で、安永9年(1780)、竹本座初演。大阪府大東市を舞台とする上の巻の「野崎村」には、それまでのお染久松物にはなかった新たな悲恋がみごとに描かれています。 野崎村の百姓久作が縁あって育てた久松は、久作の妻の連れ子おみつの許婚(いいなずけ)でありながら、奉公先の娘お染と恋仲。決して許されない主従の恋を危ぶんだ久作は、久松が実家へ戻されたのを幸い、すぐにおみつと結婚させることに。諦めかけていた祝言が、突如、現実のものとなり、おみつは大喜び。 一方、この恋が叶わぬときには死ぬ覚悟で、久松のあとを追って来たお染。久松も心中を決意。けれども、人の道に背くこの恋を諦めるよう、久作に諭され、心ならずも別れを約束しました。二人を死なせたくない、おみつを幸せにしてやりたい、その願いが叶ったと久作が喜んだのも束の間、花嫁姿のおみつは、実はすでに髪を切り、俗世を捨てた尼に。二人の本心は心中と見抜き、命を助けるため二人を添わせようと、自身の幸せを諦めたのでした。 悲しみから一転、段切は、名曲として知られる旋律を三味線が連れ弾きで華やかに奏で、人形が笑いを誘います。 |