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京の二条河原での心中(1702?)で知られたおしゅん・伝兵衛に、四条河原での刃傷沙汰と、貧しい猿廻しが親孝行で褒賞されたことを絡めたとされる、三巻の世話物で、眼目は中の巻の「堀川猿廻し」。気はやさしくて臆病者、文字は読めなくても誠実に生きる猿廻しの与次郎を中心に、その日暮らしの貧しさの中、互いに思いやる家族と、その別れを描いています。天明2年(1782)、江戸の外記座で初演され、好評を博したこの段は、大坂で上演されたある時代物の猿廻しのくだりをもとにしたものですが、作者、成立等、作品全体についての確かなことはよくわかりません。 大名の御用を勤める伝兵衛は、相思相愛の祇園の遊女おしゅんに横恋慕した出入先の侍を殺してしまい、お尋ね者に。 おしゅんの兄、猿廻しの与次郎は、目の見えない、病身の老母を大切に世話する孝行息子。伝兵衛との関係で店からひそかに実家に戻された妹のことも、心配でなりません。母もまた同じ思い。伝兵衛が心中しに来たら…。二人は、おしゅんを死なせまいと、伝兵衛への離縁状を書かせ、一安心。 その夜、現れた伝兵衛に妹の手紙を突きつける与次郎。ところが、それは母と兄に宛てた書置きでした。あくまでも伝兵衛と死ぬ覚悟のおしゅん。残された家族の嘆きを思い、一人で死のうとする伝兵衛。けれども、大事な夫を見捨てては、女の道が立たないと、おしゅんは聞き入れません。 その思いに心動かされ、母は娘を伝兵衛と行かせることに。与次郎はめでたい猿廻しで二人を送り出すのでした。 「そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さん」に始まるおしゅんのクドキや、悲しみの漂う猿廻し(華やかな旋律に乗せて、人形遣いが左右の手で一体ずつ猿を遣います)で有名な、人気演目です。 |