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妻もいる38歳の男が隣家の14歳の娘と心中―。 ことの起こりは、二人が旅先で偶然出会い、同じ宿に泊まったこと。深夜、供の丁稚に言い寄られたお半は、助けを求めて長右衛門のもとへ。日頃から何かとお半の面倒を見ている長右衛門は、ここで寝たい、眠たいと訴えるお半を何の気もなしに蒲団へ入れてやり、思いもしなかった間違いが…。 長右衛門にとってお半の亡父は大恩人。その臨終に、親代わりとなって将来お半に幸せな結婚をと頼まれた身で犯してしまった、恩人を裏切る過ちに、苦悩する長右衛門。一方、幼いときから長右衛門にかわいがられ、恋心を抱いていたお半は、決して叶わぬ恋と、長右衛門の子を宿したことに悩む日々。 さて、そんな中、悪事を企むのが、長右衛門の養父の後妻とその実子。お半との関係を言い立て、盗みの罪をなすりつけて、長右衛門を追い出す魂胆。親子の責めにひたすら耐える長右衛門を救ったのは、妻と養父でした。 長右衛門の苦悩を察し、自害を恐れる二人。親より先に死んでくれるな、いつまでも夫婦でいたい…。二人の思いを聞く長右衛門の胸は張り裂けんばかり。実はすでに死を覚悟していました。取り返しのつかないお半の妊娠、そして、今日降ってわいた難題。どちらも死をもって償うよりほかありません。 お半もまた死ぬ覚悟。長右衛門に書置きを残し、桂川へ。お半を一人で死なせまいと、あとを追う長右衛門。こうして二人は、一緒に死ぬことに…。 1761年、京都の桂川で見つかった親子ほど年の離れた男女の遺体。すぐに心中事件として浄瑠璃にとりこまれましたが、江戸時代の記録では強盗殺人とされています。 ご覧いただくのは、安永5年(1776)、大坂の北堀江市の側芝居で豊竹此吉座が初演した、菅専助の上下二巻の世話物の下の巻(道行は後補)。六角堂(頂法寺・京都市)近くの商家を舞台とした眼目の「帯屋」では、チャリ場(笑いの場)もお楽しみください。 |