ど〜なの?DJ
皆さんからの素朴な疑問・質問にお答えするべく
DJ淳吾が調査・奮闘するコーナー。
なんでも聞いてください!お待ちしています。


FAX:022-229-2385 MAIL:watch-in@tbc-sendai.co.jp



[平成21年8月12日(木)放送]
画像 画像 画像 画像 画像 画像 画像 画像 画像 画像 画像 画像 画像 ●Disc.32

「長沼のハスはなぜ咲かない?」

今回は、登米市にお住まいの匿名の男性から切実なお便りが届きました。
登米市迫町にある長沼のハスが原因不明の生育不良で咲かずに、地元のみなさんが楽しみにしていた「はすまつり」が中止になってしまったそうです。可能な限り、調べてもらえないでしょうか……
という依頼です。

周囲27kmの長沼はハスの群生地として知られ、毎年8月には咲き誇るハスの間を船で進むはすまつりが賑わいを見せるはずなのです。
生育不良の原因を究明すべく、緊急の現地調査が行なわれるという事で、私も同行させて頂く事にしました。

長沼を遠くから俯瞰で眺めると、ハスの葉が水面を覆っている様子をそれなりに確認する事はできるのですが……。
今回の調査は8月初旬のよく晴れたある日、午前10時から、水生植物の専門家で岩手大学の菅原亀悦(きえつ)名誉教授の指揮で行なわれました。

参加した地元関係者のうち、長沼漁協の阿部正一組合長は「今年は惨憺たる状況です。花もないし、葉があるのも沼の縁だけ」と語ります。
沼全体の3分の1ほどがハスの葉に覆われてはいますが、肝心の花は例年の2割ほどしか咲いていないというのです。

船で沼の中に進んだ菅原先生。
まずはいくつかのポイントで水深を測ります。
その結果、長沼の水深は深い所で2m以上ありました!
ハスの生育に適当な深さはせいぜい1m程度という事で、ハスは水面まで伸びるだけで相当な負担がかかる過酷な状況にあるようです。

それでは菅原先生の見立てによる、生育不良の考えられる原因を1つずつ見てみましょう。

@ 水位の上昇
ハスの葉が水面まで伸びるのは毎年5月半ば。今年はこの時期に何らかの原因で水かさが増え、葉が水に浸かって枯れてしまったというのです。
ハスは葉の表面で呼吸するため、ただでさえ水深が限界に近いなか茎を伸ばしてきた株が、水面に葉を出した途端に雨降りなどで水をかぶってしまえば、2〜3日で弱ってしまうのだそうです
では、春先から初夏の成長期に沼の水を抜いて生育を助ければ良いのにとも思いますが、長沼の水は農業用水として用いられており、田んぼで最も水が必要な時期と重なる事からも、むやみに水を減らすわけにも行かないようです。地元としては思案のしどころなのですね。

A 過密状態
今回 調査のために小舟を出してくれた船頭さんによれば長沼では昔、ヒシやマコモの仲間が数多く見られ、ジュンサイも取れるほど水はキレイだったそうです。それが今では、ハスしか目に入りません。
ハスは生長して生い茂ると一見壮観ですが、まずハスそのものの栄養が不足がちに。
また水中には日光が届かず、他の植物も弱って行きます。ハスの増え過ぎが、沼の植生バランスまで壊してしまっていたのです。

調査をうけ地元の人達は、来年以降のハスの再生に望みをつないでいました。
しかし私達、DJ取材班の調査はコレだけでは終わりません。
長沼の近くで同じくハスの名所であり、登米市と栗原市にまたがる伊豆沼の様子を見て行く事にしたのです。

着いてビックリ!長沼とは対照的に、隣の伊豆沼ではハスが今しも見頃を迎えていました。
伊豆沼・内沼はすまつりも、例年どおり8月いっぱい開催中との事でした。
それにしても、この差は一体何なんでしょう?

伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター研究員の嶋田哲郎さんによると、長沼との最も大きな違いは「浅い」という事。
長沼の水深が2m以上あったのに対し、伊豆沼はいちばん深い所でもせいぜい1.6m。ハスへの負担はまだ軽いといえるでしょう。

ハスにとって有利な条件の伊豆沼では、さらに生育を助けるべく水質の浄化にも取り組んでいました。
それはハスの刈り取りです。
ハスが枯れる前に、増え過ぎたら少しでも取り除いてやる事が水質を保ち、結局はハスにとっても良いそうです。

また、去年 問題となった鳥インフルエンザへの対策も、ハスの生育には思わぬ効果があったといいます。
サンクチュアリセンターや地元の愛鳥会では、組織的な給餌を9割減らしました。
その結果ハクチョウが冬の間、かなりの量の野生のハス=レンコンを水に潜って食べたそうです。
深い長沼ではそうも行きませんが、伊豆沼ではハクチョウのエサとなった事で間引きの効果が出たようなのです。

地元にとって貴重な観光資源であるハス。
どちらの沼にも昔から自生している物ですが、何度か台風などの水害で全滅しかけたのをその都度、地元の人達が貴重な観光資源として苦心して復活させて来ました。
毎年きちんと花を咲かせるためにも、それぞれ沼の状態に合った手入れが必要なのだと実感しました。



バックナンバー 最新版
BACK
line
UP↑