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●Disc.57
「アルミの蓋が溶け出した梅干…食べられる?」
今回のリサーチ依頼は、富谷町にお住まいのM.N.「あすあん」さんから。
「初めて梅干を漬けてみたのですが、重石に使ったアルミの蓋が溶けてしまいました。食べても大丈夫ですか?」
という内容です。
調べるうち、色々と面白い事が分かって来ましたよ。
早速あすあんさんのお宅を訪ね、問題の梅干とアルミのふたをそれぞれ見せて頂きました。
梅干のほうは、何も変わったところはないようです。
しかしその梅干を漬けるのに用いたアルミの蓋。
たしかに所々腐食して、落としぶたの穴が大きくなってしまっています。その分のアルミニウムが、梅干や漬け汁の中に溶け込んだものと思われます。
ちなみに、あすあんさん。もうひと瓶 鉄の蓋を使い梅干を漬けたのですが、コチラのほうも少し腐食が進んでいました。
あすあんさんに聞いてみます。
「食べてみたんですか?」
「はい……ひと粒だけ」
「ええっ!食べちゃった!?」
そんなやりとりがあって、僕もアルミが溶け出したかも知れない梅干のほうを、おそるおそる頂いてみる事にしました。
うわ〜〜〜〜〜しょっぱい!ちょっと塩が利き過ぎちゃいましたかね?
でも白いご飯と一緒食べたら絶対美味しいはず。
味だって、特に変わったところはないようです。はたして食べても大丈夫なんでしょうか(もう食べちゃったけど)?
今回の疑問を、東京にある (社) 日本アルミニウム協会にぶつけました。
田尻彰 理事です。ズバリお答え頂きましょう!
「アルミが溶け出したと思われる梅干……食べても大丈夫ですか?」
「問題ないと思います」
やりました〜!その答えを聞いて、まずはホッとひと安心です。
聞けばアルミニウムは、地球の表面=地殻を構成する元素のうち、酸素やケイ素(シリコン)の次に多い8%と、豊富に存在しています。私達が口にする、ありとあらゆる食品に含まれているという事なんですね。
ところで「アルミは錆びにくい」と 理科の授業で習った記憶があるのですが、簡単に腐食してしまっていたのはどうしてなんでしょうか?
田尻さんによると、鉄のような赤サビにならないというだけで、アルミも腐食するそうです。
特に塩や酸に弱いそうで、なるほど梅干のような食品に用いるのは過酷な環境なのかも知れませんね。
ただし、料理に使ったぐらいでアルミ製品が腐食する心配はなく、あくまで長期間漬けておいた場合の話だそうです。
そういえば、メールネームあすあんさんは、鉄の蓋でも梅干を漬けていたんでしたね。
あちらの梅干は、食べても大丈夫なんでしょうか?
今度は東北生活文化大学に、健康栄養学が専門の先生を訪ねました。鈴木裕行教授です。
鉄が溶け出したと思われるほうの梅干は、はたして食べても大丈夫なんでしょうか? 鈴木教授のお答は、やはり「問題ない」との事でした。
しかしアルミと比べると、鉄は人体にとっての必要性に大きな違いがあるといいます。
というのも、アルミニウムは食品として積極的に摂取する必要のない元素であるのに対して、鉄は体にとって不可欠な元素だからだそうです。
例えば、血液中にあって酸素を運ぶヘモグロビンは、鉄を主な成分としています。
他にも鉄は呼吸に関わる様々な酵素の働きを助けていて、毎日ある程度の量を摂取する必要があるというのです。
なるほど。疑問が解けたところで、今回のあすあんさん特製の梅干を鈴木教授にもおすそわけしました。
鉄が多く溶け込んでいると、いわゆる「鉄の味」がしてしまうという事ですが、これは問題ないみたい。
やっぱりちょっと塩がきいてるかな〜という鈴木教授の感想でした(笑)。
でもあすあんさん!初めて漬けた梅干……捨てずに済んで本当に良かったですね。
美味しく召し上がって下さい!!
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