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●Disc.93
「クラシックカーを楽しむ生活とは?」
今回は「とうほく自動車フェスタ」(7月20〜29日)開催に合わせ、いわゆる「旧い車」を取り上げてみました。歴史的名車や憧れの車がズラリ勢ぞろいしたイベントです。
その開催に先がけて行なわれた、県庁前でのデモ走行会。
何と、登場したのは貴重なベンツ・パテント・モトール・バーゲン!
1886年生産開始の、ガソリン車第1号とされる車です。レプリカではありますが、エンジン始動は車体後部のフライホイールをエイヤッと両手で回す必要があり、儀式めいた点も魅力です。
その乗り味はというと……最高時速15kmにもかかわらず、フルオープンであるため風を切る疾走感は非常にダイナミック。
1リットルの1気筒エンジンで、ギアも前進1速しかありません。後退時には皆で押してやる必要があります。
馬車に代わる乗り物として開発された黎明期の3輪自動車は、現代の自動車とはまた違う、ゆったりとした時間を提供してくれました。
車好きとしても、大変貴重な経験をさせてもらえました!
さて。さすがに、ベンツ・パテント・モトール・バーゲンは博物館クラスの車ですし、とても実用には向きません。
もう1台ご紹介する旧車は、スバル360です。 実際に車検を取っていて、公道を走れる車ですよ。
スバル360といえば「てんとう虫」の愛称で親しまれ、1958年から1970年にかけて40万台近くが生産された、高度成長期におけるまさに国民車。
懐かしいと感じられるご年配の方も多いのではないでしょうか?
太白区内で印刷会社を経営する、佐々木康夫さんが今もお乗りだと聞き、取材させて頂きました。
佐々木さんがお持ちのスバル360は、1961年式の通称「出目金」と呼ばれる顔を持つシリーズ。
僕は実物を見るのは初めてでしたが、実に小さい!長さ、幅ともに現代の車の3分の2程度しかありません。
そこへ大人4人を乗せる室内レイアウトは、画期的というか無理矢理というか(笑)……。
佐々木さんのスバル360は、実はお父さんが生前 乗っていらした車だそうです。
しばらく乗った後 一度知り合いに譲ったそうですが、その方が40年間(!)大事に乗られていた物が再び手元にやって来たのだとか。
佐々木さんはそうした経緯を「先祖返り」と呼んで、笑うのでした。人の縁が車との縁をつないだ、という事でしょうか。
そういうエピソードを聞いてからこの車に乗ると、またひとつ時代を感じます。
佐々木社長は「日本が良かった時代」とおっしゃっていました。
それにしても、音から振動から何もかもがダイレクト!まるでゴーカートに乗っているような車です。
今の交通のリズムについて行くのがやっと……そんな印象を受けました。
佐々木社長は 「旧い車に乗る事は、次世代にそれを受け継ぐ責任を伴う」と語ります。
通称 「出目金」 と呼ばれるシリーズのスバル360は、まともに走る車は全国で10台もないといいます。
この車を直せる人も、少なくなってしまいました。
維持して行く上で必要なのは、信頼のおけるメカニックがそばにいてくれる事だそうです。
ただ、部品もわりと手に入るし、税金も安いので維持費はあまりかからない(!)というお話でした。
今や絶滅危惧種となった、かつての国民車スバル360。50歳を過ぎた今もオーナーに愛され、静かに余生を過ごしています。
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