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●Disc.100
「定義山の摩訶不思議なコイ」
今回のご質問はちょっとワケありのようで、太白区にお住まいのM.N.キコスケさんからです。
「定義山に不思議なコイがいるという話を他局で見て出かけたのですが、見つかりません。ウォッチンでも撮影して放送して下さい」というもの。
他局のフォローまでお願いされたら、これはもう行くしかありません!
仙台市西部の定義山は、ドライブコースとしても人気のあるエリア。西方寺は浄土宗の寺院で、多くの参拝客が訪れます。
取材に出かけたこの日は好天に恵まれた事もあって、紅葉見物に大勢の方が訪れていました。
真っ赤なモミジと、五重塔。仕事抜きで美しい!今度、絶対プライベートで来よう……そう心に誓いつつ、捜索開始です。
ところが池が結構広い上に、見たところコイも相当な数が泳いでいるので、なかなか見つかりません。
ここは1つ他力本願、お土産屋さんに聞いちゃいましょう。
「すみません。噂の不思議なコイというのはどこにいるのですか?」
「そのコイなら、あちらです」
ありがとうございました。すぐ分かりましたよ。庫裏(くり)の奥にある小さな池ですね。
教えられてのぞき込むと、一目でそれと分かる摩訶不思議なコイを見つけました!ヒラヒラと、とにかくヒレが長いのです。
コチラの小さな池は探さず帰ってしまう方も多いのかも?
長いヒレを使って泳ぐ姿が、いっそう優雅に見えるコイです。
見物客も結構います。皆さん、こうしたコイを初めて見るようで、驚きの表情。
そりゃあそうですよね?僕もこんなコイ、見た事ありません。
よく見ると、親子でしょうか……同じ白い魚体でヒレの長いコイが2匹いるようです。
西方寺副住職の大江田 紘義(こうぎ)さんによると、年に1度、池をさらっての大掃除をするそうですが、数年前に業者の方が不思議なコイの存在に気付いたとか。
どうもすぐに隠れてしまうらしく、皆さんに見てもらいたいという事で、小さな池に引越ししたのでした。
ちなみにヒラヒラと白いヒレの棚引く様子が、あの歌手の衣装に似ているとの事で、付いた愛称が「ジュディ・ オング」。上手い!
さて、このネーミングの是非はさておき、不思議なコイの存在……お寺や土産物店にとっては満更でもなさそうです。
それにしても一体なぜ、不思議な鯉が池に現れたのか?そして、その正体は?
謎を探るべく、泉区にあるコイの養殖場を訪ねました。初めての養鯉場という事で、ちょっとワクワクします。
佐藤善悦さんが経営する「泉養鯉所」。
ココでは多い時期でおよそ3,000匹のコイを養殖しています。
せっかくなので、まずは佐藤さん自慢のコイを見せて頂く事に!
ちょっと下世話かも知れませんが、お値段もしっかり聞いてしまいました(笑)。
秋翠(しゅうすい)という品種は、刺青をしたような黒い斑紋が特徴の、美しいコイ。お値段、稚魚1匹で¥30,000也!
浅黄(あさげ)と呼ばれる黒いコイは、ニシキゴイの原種に近い珍しい品種。コチラは佐藤さんによると、お値段1匹¥3,000とか。
さらに、赤や青(!)など多彩な色が特徴の五色(ごしき)と呼ばれる鯉は、佐藤さんいわく、値段が付けられないほどの価値があるそうです。 何だかため息が出て来ました……。
さて、それではいよいよ西方寺の池にいた「ジュディ・オング」=不思議なコイのお話。
その正体は、ヒレナガゴイまたはヒレナガニシキゴイというコイでした。
何と、佐藤さんの養鯉場では私の取材を前に、兵庫県の生産者から稚魚を取り寄せて下さっていたのでした。ありがとうございます。
おおっ!色んな色のがいますけど、たしかに全部ヒレが長い。
聞けば、インドネシア産の鯉と日本の鯉を掛け合わせたとされるもので、以前は九州などで生産が盛んでしたが、今では下火となっているそうです。
佐藤さんによると、金魚の遺伝子もどこかで入っているのではないか……というお話です。
本来は暖かい地域か、あるいは室内で水槽に泳がせるのに適したコイだそうですが、おそらく飼っていた誰かが放してしまったために、定義山の池に住み着いたのでしょう、というのが今回の結論。
いやぁ、コイって奥が深いですね!
でも飼い切れなくなったからといって、池に放してしまうのはもちろんやってはいけない事。飼い主としての責任をまっとうして欲しいと思いました。
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