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●Disc.118
「セイタカアワダチソウの驚くべき秘密」
この時期あちこちで見られる「セイタカアワダチソウ」をご存知でしょうか?
今回は、宮城野区のクーママさんから質問です。
「去年まであちこちで目に付いたセイタカアワダチソウを、今年は見かけない気がします。我が家の近所だけでしょうか?」
という内容です。
セイタカアワダチソウは、毎年秋に黄色い花を付けて群生する様子が河川敷や空き地などで見られます。
明治初期、北米から観賞用に持ち込まれた物が定着したとされる、いわゆる帰化植物です。
では、そのセイタカアワダチソウを今年はあまり見かけない……というクーママさんの疑問にお答えするため、まずは仙台市野草園を訪ねました。
この時期、野草園ではリンドウの仲間やノギクなどの植物を楽しむ事ができます。
伊深園長に、セイタカアワダチソウのある場所へ案内して頂きました。
あ〜、ありますね。定期的に刈り取ってしまうそうですが、何とか少しだけ残っていたので見せて頂きます。
刈り取らないと、繁殖力がとても強いので手に負えなくなってしまうそうですよ!
そんなセイタカアワダチソウを、クーママさんが今年あまり見かけないとおっしゃるのは一体どうしてでしょうか?
伊深園長は、どうもこの植物自身に原因がありそうだといいます。「アレロパシー」の働きによるものだそうです。
はて?アレロパシーとは一体……。
園長によると、セイタカアワダチソウは、根から他の植物の成長を抑える物質を出しているというのです!
この働きがアレロパシーですが、実はココに思わぬ落とし穴がありました。
長年同じ場所に生えている株は自ら分泌した物質が土にたまり、育ちが悪くなってしまうのです。
言ってみれば「自滅」ですね。一般的に、連作障害と呼ばれるものがコレに当たるそうです。
クーママさんが今年、近所であまり見かけないというのは、このアレロパシーが原因かも知れません。
それでもあまりに増え過ぎてしまった、外来植物のセイタカアワダチソウ。何とか有効利用できないか、その方法について野草園の伊深園長に聞いてみました。
まず、天ぷらとして食べられない事もない(苦味は強いみたいです)。
ヨモギと同じキク科の植物なので、切り花を入浴剤として利用可能……という事でしたが、他にも驚きの方法があったのです。それが草木染めです。
仙台市内の自宅に併設した工房で作業を行なうのは、軽部和湖さん。
藍を始め様々な植物の色素で布を染め上げる「草木染め」の、愛好歴40年というスペシャリストです。
軽部さんは以前、登山をしていた時に草花を見て「この色を自分で身に着けてみたい」と思ったのが、草木染めにハマったきっかけとか。
植物の成長など、季節の変化に敏感になれるのも草木染めの魅力だといいます。
軽部さんによると、実に様々な植物で草木染めができるそうで、よく知られた藍や紅花の他にも、キハダというミカン科の落葉樹の樹皮で黄色く染めた物、何とタマネギの皮(!)まで染色の材料に出来てしまうのです。 コレなら今回のテーマであるセイタカアワダチソウも期待できそうですよね。
まずはセイタカアワダチソウの上半分を、ハサミで細かく刻みます。
水と一緒に鍋に入れ、10分から20分ほど煮込みます。
植物の色素が出た煮汁をざるで濾して、染めたい布をまんべんなく浸します。
何だか青くさい、独特の香りです。
一度染まった布は、焼ミョウバンを溶かしたぬるま湯に。色素をしっかり定着させるために欠かせないこの作業を「媒染」と呼びます。
焼ミョウバンの他にも植物の種類によって様々な物質を使いますが、仕上がりに微妙に色合いが生まれるそうです。
セイタカアワダチソウで染めたスカーフやストール。
とても優しい色合いでした。
※セイタカアワダチソウを川の土手や河川敷から持って来る事についてですが、行政に確認したところ「営利目的で大量に取るなどせず、趣味で楽しむ範囲なら問題はありません」との回答でした。
良識を守って、摘んで下さいね。
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